英文法:法助動詞は「出だし」で微妙なニュアンスを伝える
法助動詞というのは、学校でならった助動詞のことです。
それらはなんとなく「未来・可能・推量の助動詞とその過去形」と覚えているんじゃないかと思います。しかし、
助動詞は丁寧語のひとつ
なのでとても重要です。
よく使われるし、使えないとまともに会話もできません。相手の本当の意図を理解できず、誤解が生じることもあります。
また、相手に悪印象を与えることもあります。
この記事では法助動詞の使い分け、意味の違いや使い方について解説していきます。
法助動詞とは?
法助動詞というのは冒頭にも申し上げたように、学校で習った助動詞で、should, could や would などです。
そのうち、この記事で取り上げるのは次の法助動詞です。
- 「出来る」という意味の can, may
- 「欲しい」という意味の want, would
- 「必要・提案」を示す must(have to), had better, should, could, need to
- 「未来」のことを示す should, will, could, would, might
※正確に言うと、have to や need to は法助動詞ではないですが、便宜上これらも解説します。
ちなみに法助動詞の「法」は mood (ムード) という意味です。
英語で modal verbs と言います。
(参照:Wikipedia 「法(文法)」)
ストレートな表現をさけ、丁寧な言い方になる
法助動詞はストレートな表現をさけ、判断や感情を相手に伝えることが出来ます。
いわゆる
仮定法をつかう丁寧な言い方
になります。ストレートな物言いは、ふつう大人は使いませんよね。
英語でも同じです。
実際に私の職場に、ストレートな話し方の英語しかできなかったためにクレームが入った人がいました。
丁寧な言い方が出来ないとトラブルのもとになります。
英語の敬語表現については、次の記事も参照ください。
》【英語にも敬語はある】知っておきたい丁寧な表現・出だしフレーズ集
日本語にすると同じでも、意味が微妙に違う
日本語にすると同じ意味でも、英語のニュアンスが異なる助動詞もあります。
使い方を間違えると相手は
???
になります。
それくらいならいいですが、意味を取り違えてトラブルになったら大変です。
背後の意味の違いを理解しましょう。
法助動詞の意味と使い方の紹介
次の章から、具体的な使い方を説明します。
- 「出来る」という意味の法助動詞
- 「欲しい」という意味の法助動詞
- 「必要・提案」を示す法助動詞
- 「未来」のことを示す法助動詞
「出来る」という意味の法助動詞
おなじ「出来る」でも意味が違う:Can, May
日本語にすると同じ「出来る」ですが、意味合いが違ってきます。
can は「可能だからできる」というイメージですが、may は「制限されてないからできる」イメージです。
- You can walk across the road
- You may walk across the road
- は基本的に「能力を考えると、歩いて渡れる」という意味です。
- は「ルールとして、歩いて渡れる」という意味になります。
英語でクイズのとき、 「・・・ができる、Yes or No? 」形式で出題されるとき、この may がよく使われます。
May は他に「祈るときにつかわれますね。有名なところで「フォースとともにあらんことを」は
May the force be with you.
と使われます。これは元々「神とともにあらんことを」を表現する
May the God be with you.
をもじったものですね。
「欲しい」という意味の法助動詞
おなじ「要求」でも子供と大人くらい違う:Want, Would
want はおわかりの通り
欲しい
ですね。それに対してwould は
要望や願望を表明する
程度です。ビジネスの場や大人同士の会話では would の方を使います。
- I want to work at home on that day.
- I would (like to) work at home on that day.
- だとストレートに要求していて、ちょっと恥ずかしい。でも
- だと控えめな希望、という感じでしょうか。
want はメモや論文などストレートな文に使いますが、会話では would を使ったほうが無難です。
「必要・提案」を示す法助動詞
「必要であること」を示す助動詞は、must, have to, had better, should などです。
ここでは、それぞれのニュアンスの違いを説明します。
個人的な強い助言か、そうでないかの違い:must と have to
最も強い言い方の must と、同じ意味の have to にはニュアンスの違いがあります。
must と have to の違い:
must
- オフィシャルなルールを示す
- 強い個人的な助言・主張
have to
- 義務からの助言・主張
must は、個人的な強いアドバイスになるため、「強制」に近くなります。
また オフィシャルなルールにも使います。たとえば、空港での「旅客に守ってほしいルール」などです。
have to は、義務感からの「しなければならない」になります。
- We must follow the rules.
- We have (got) to follow the rules.
- は、「私達はルールを守らなければならない」という強い個人的な助言をしています。
- は、「我々は(我々の義務として)そのルールは守るべきだ」という意味になります。
have to の慣用句として、次のものがあります。
I’ve got to go. ( = I have got to go)
「もう行かないと」という意味で使われます。これは言外に「用事や理由があって退席する必要がある」という意味になります。
その通りにしないと問題が起こる: had better
had better は、
「もし言ったことをやらないと問題や事故が起こるだろう」
というニュアンスを言外に表現しています。
We had better follow the rules
上記は「守らないと事故が起こるかもしれないから、ルールは守った方がいい」というニュアンスがあります。
関連しておもしろいショート動画がありましたので、ご紹介します。had betterの誤用です。
》“had better”の本当の意味って…(出典:Youtube@BerlitzJapan)
Yeah I really want to go to Okinawa. I kind of want to go this winter vacation.
(すごく沖縄に行ってみたくて、今年の冬休みに行こうと思ってるんです。)
You had better go in summer(夏にいくほうが身のためだ)
?・・・OK・・・。
気楽にアドバイスや提案ができる:should, could
had better に対して、should や could は、
ちょっとしたアドバイスや提案、
のときに気軽に使うことができます。
We should (could) follow the rules.
普通の会話では should や could を使うことが多いです。
「〜が必要だ」と伝える:need to
need to の意味は文字通り「~する必要がある」です。なので会社で上司から「カジュアルに」言われても
ああ、命令だな
と思いますし(笑)、同僚からアドバイスや仕事内容を訊いてるときは
ルール、慣習を教えてくれてる
と思います。
別の使い方で、義務のテイをとって自分の要望を表明することもあります。
I need to work at home on that day.
直訳では「私はその日、家で仕事をする必要がある」ですが、要は自分がやりたいわけです。(笑)
なので、これは実は願望を表明しています。こういう使い方もあります。
Needn’t to もある
Needn’t to という使い方があります。意味は don’t need to と同じで「~する必要がない」です。
You can come with me if you like but you needn’t to come if you don’t want to.
学校では「あまり使われない」と習いましたが、実際に使ってます。
イギリス英語だとふつうなのかもしれません。
「未来」ついて話すときの法助動詞
ふつうに使う、予想や推測する未来:should
未来形というと「I will」が頭に浮かびます。でも使わない人も多いです。
後述するように「決意、断定」の意味が入るからです。
何でもかんでも「確信」をもって言う人なんていませんから、
「I will」 の代わりに「I should」を使う
ことが多くなります。
- I will be at home at the time
- I should be at home at the time
- は「その時間には、確実に家にいる」という意味になります。
- は「たぶん、その時間には家にいる」という感じになり、すこし確実性が下がります。
約束をするわけでもない限り、ふつうは「たぶん」ですよね。なので気軽な会話では「I should」になることが多いです。
えぇ、ホント?
と信じない人も多いので、証拠です(笑)次の引用は shouldの使い方を説明しています。
Use “should” to express something that is probable, ask a question, or show an obligation or give a recommendation. To express something that is probable, you might say, “Joe should be here soon.“
( 出典 : “should vs. Would: How to Choose the Right Word. “ : ThougthtCo.com から引用)
太字の部分は
Joe は多分すぐここにくるよ
くらいのニュアンスです。こんな感じで使います。
学校では「推量」として習ってると思います。
個人的に気軽に使える助動詞なので、とても重宝してます。
意思・断定をする未来:will
前述したように、will は「決意、断定」のニュアンスを含みます。確実性がかなり高く、約束をする雰囲気を感じます。
- I should work at home on that day.
- I will work at home on that day
- だと「その日は家で仕事をしているよ、たぶん」くらいのニュアンスですが、
- だと「その日は家で仕事をする予定です」くらいの意思を感じます。
あいまいな未来:could、would、might
could は可能性があることを表明するときに使います。なにか根拠があって言ってます。
might はもっと気軽です。根拠もなく可能性を言っているので、あてにならないイメージです。
would はすこし願望が入ってるニュアンスです。
- The person could be the banker. ( = It is possible that the person is the banker )
- The person would be the banker.
- The person might be the banker.
- could は客観的に可能性を示していて、根拠があって言っている可能性があります。
- would は「その人があの銀行員だったらいいな」くらいの願望が含まれています。
- might は願望はないですが、気軽な表現です。
悪くいうと無責任さを表現していて、「~だと思う」程度です。
最初に書いた should も、あいまいな未来を示す助動詞ですね。
まとめ
この記事では、知っておくと後悔しない法助動詞の使い方や注意すべき点について解説しました。
いわゆる仮定法なのですが、実は仮定法はとてもよく使われる表現であることがわかっていただけたかと思います。
自分用のメモや論文ではほぼ使うことはありません。でも実生活では必要不可欠なので、どんどん使って慣れていきましょう。
話すための英文法をまとめた記事があります。ぜひご参照ください。
チャンクという語学学習の基本について、次の記事が書いてあります。
時制について、図解してしています。
日本語にない後置修飾について説明しているのは、次の記事になります。